当時、コロナ禍の環境においてテレビをつければ、画面から流れてくるのはコロナの話題ばかり。仕事柄、医療やケアの最前線に近く、直接関わることも多かったため、毎日が本当にストレスだった。そんなとき、これまでほとんど見向きもしなかったYouTubeを、現実から逃避するように見始めた。
そこで運命的に出会ったのが、一本の動画だった。
「絵が下手でも、365日描き続けたらこんなに上手くなった」
「これはひどい(笑)」
失礼ながら、この動画主の最初の絵に対する私の第一印象は、そんなものだった。しかし――ビフォーアフター形式で進むその動画に、私は一瞬で釘付けになった。まるでダイエット動画を見ているかのように、絵がみるみる上手くなっていく。そして1年後、画面に映し出されたのは、まるでプロかと思うようなクオリティの作品だった。
強烈な衝撃とともに、私の目は画面に吸い込まれた。画面の中で、魔法のように使われていた”あの端末”は一体何なのだ?
それが、すべての始まり――iPadだった。
もちろんiPadの存在自体は知っていた。しかし、それまでは「テレビの延長線上にある大きなスマホ」くらいの認識でしかなかったのだ。
絵から遠ざかっていた、本当の理由
子どもの頃から、絵を描くのが大好きだった。一時期は周りから「神童」とも呼ばれていた(笑)。しかし、高校生の頃にトラウマ級の喪失体験をし(この話はいずれ、どこかで)、社会人になる頃には、まったく絵とは無関係の生活を送るようになっていた。
「自分はもう筆を折った人間だ。二度と人前で絵を描くことなんてないだろう」
ほんの数年前まで、それが私にとって当たり前の心理だった。
そんな、お世辞にも上手とは言えない人間が、iPadを使い、まるで筋トレのように毎日絵を描き続けるとどうなるか。その動画の結末を見たとき、私の脳裏に激しい「電流」が走った。
「齢(よわい)は取ったが、多少の絵心はまだ残っている。あの自分が、この魔法のようなガジェットを使いこなせば、一体どうなるんだ……?」
さらに、絵を描くことへの障壁も頭をよぎる。通常、絵を描くにはそれなりの「準備」が必要だ。画材を引っ張り出し、スペースを確保し、描き終わったら片付ける。コロナ禍において心身ともにゆとりがなく、日々の買い物すら満足にできない張り詰めた状態の中で、この「描き始めるまでのハードル」は地味に、そして圧倒的に高かった。
その高いハードルを一気に消し去ってくれたのが、iPadとProcreate(プロクリエイト)の組み合わせだった。
iPadが変えた、「絵を描く」という行為の概念
iPadが1台あれば、どこでもそこがアトリエになる。テーブルの上はもちろん、ソファの上でも、ベッドに寝転がりながらでもいい。画材を広げる必要もなければ、汚れた筆を洗う片付けの時間もいらない。
「描きたい」と思った瞬間に、画面を開くだけですぐに没頭できる。
これこそが、私にとってのマイ・レボリューション――「革命」だった。コロナ禍の閉塞感の中で、iPadは私に「自分だけの自由な時間」を取り戻してくれる相棒となった。毎日少しずつペンを走らせるうちに、あの少年の頃のように、自由に、好きに描いていた頃の気持ちが鮮やかによみがえってきた。
楽しかった。ただただ、楽しかった。
このiPadで絵を描くこと自体が、当時の私にとって、まぎれもない“心の処方箋”だったのだ。
1台目:エディオンで出会った、初めてのiPad Pro
動画を見た翌日、私は居ても立ってもいられず、近所のエディオンへ向かっていた。迷わず手に取ったのは、iPad Pro 第4世代 Wi-Fi 128GB。初心者のくせに最初から最上位の「Proモデル」を選んだのは、あの動画主のマシンがiPad Proであったこと、そして「どうせ買うなら本気でやる」という自分への覚悟の表れだった。
そして店頭にあった「残り1台」の文字。これが、私の背中を決定的に後押しした。
購入価格:110,000円
そこから約1年間、私は失った時を激しく巻き戻すかのように、毎日のように描き続けた。Procreateの操作を指に染み込ませ、少しずつ”作品”と呼べるものが描けるようになり、InstagramやX(旧Twitter)への投稿も開始した。
そして1年が経った頃、さらなるスペックを求めて新しいモデルへの乗り換えを決意する。相棒を送り出した先は、メルカリだった。
売却価格:93,000円
1年間、あれほど使い倒したにもかかわらず、手元から実際にすり減った金額はわずか17,000円。月換算にするとなんと約1,400円。この圧倒的なリセールバリューの高さには、正直、目から鱗が落ちる思いだった。
Apple製品のリセールバリューは、なぜこれほど高いのか
他メーカーのタブレットと比べても、Apple製品の「資産価値」は別格だ。理由はシンプルで、次の3つの強みがあるからだと考えている。
- 長期間にわたるソフトウェアアップデートの安心感
- 世界的なブランドへの絶対的な信頼性
- 中古市場における根強い(かつ安定した)需要
参考までに、iPad Proシリーズの一般的なリセール率の目安をまとめてみた。他社製タブレットとの差は一目瞭然だ。
| 使用期間 | iPad Proのリセール率 | 他社製タブレットの目安 |
|---|---|---|
| 約1年使用 | 80〜90%前後 | 40〜60%程度 |
| 約2年使用 | 70〜80%前後 | 30〜50%程度 |
| 約3年使用 | 60〜70%前後 | 20〜40%程度 |
※状態、バッテリー残量、ストレージ容量、売却時期によって変動します。あくまで目安です。
私の1台目は、約85%という高水準なリセール率を叩き出した。もしこれが他社製品であれば、同じ期間で半額以下になっていてもおかしくない。
1台目の運用まとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 機種 | iPad Pro 第4世代 Wi-Fi 128GB |
| 購入場所 | エディオン |
| 購入価格 | 110,000円 |
| 使用期間 | 約1年 |
| 売却先 | メルカリ |
| 売却価格 | 93,000円 |
| 実質負担 | 17,000円(月額 約1,400円) |

次回は、ここから始まった2台目、3台目への鮮やかな乗り換え劇と、最終的に3台合計でどれほどのコストになったのか、その全貌を公開します。すべての数字を弾き出したとき、「iPadは高い買い物だ」というこれまでの常識が、文字通り完全に覆ることになった。
→ 後編「3台を乗り継いだ軌跡。iPad Proは『高い買い物』ではなかった」(近日公開)

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