「大正浪漫シリーズ 慕情」完成までの全工程です。今回はどうやってあの「旧さ」を再現しているか包み隠さず公開します。
作品タイトルは「慕情 / Bojo – Longing」。深い藍色の着物をまとい、衿元にそっと手を添える大正の女性を描きました。レイヤーは3枚だけ。ブラシは六鉛筆1本。それだけです。
【キャンバス設定】海外販売を見据えた設定から始める
- サイズ:A4(210×297mm)
- 解像度:300dpi
- カラープロファイル:sRGB(※Display P3のままだとINPRNTでエラーになるので必須!)
この設定にしておけば、完成後そのままINPRNTやFine Art Americaへ出品できます。あとから変えようとすると色味がずれるので、最初に必ず設定してください。
【レイヤー構成】3枚に絞る理由
- レイヤー① ── 線画(六鉛筆)
- レイヤー② ── 色塗り(六鉛筆)
- レイヤー③ ── 背景・仕上げ(六鉛筆)
レイヤーを増やせば増やすほど「どのレイヤーで描いているか」を管理する手間が増えます。3枚に絞ることで迷わず描くことに集中できる。これが私のやり方です。
【STEP 1】最初から顔のパーツを入れ


今回は最初のラフから目・鼻・口を描き込みました。
髷のシルエット、着物の衿の角度、首の傾き。それと同時に「この女性はどんな表情をしているか」をイメージしながら描いてます。今回「慕情」という作品のタイトルですが、実は後付けなんです。タイトルは作品完成してから決める事が自分の場合多いですね。
- 使用ブラシ:六鉛筆・不透明度30〜40%
- 使用レイヤー:①線画
【STEP 2】線を重ねて形を見つける
新しいレイヤーは作りません。①線画レイヤーにそのまま重ねて描き直します。
消して描き直すのではなく、線を重ねて正しい形を探していく。アナログのデッサンと同じ感覚です。自分の場合、iPadはデジタルツールと言うより、電子クロッキー。そんなイメージで使用しています。 髷の丸みが決まったら、次は衿元に添える手の形へ。指一本一本の角度をこの段階でしっかり決めておきます。
【STEP 3】白い背景のまま色を乗せ始める

②色塗りレイヤーに切り替えます。背景はまだ白いままで構いません。
最初に塗るのは髪の黒と顔の肌色です。この2色が決まると、着物の藍色や背景の黄土色が自然と見えてきます。色は孤立しては決められない。隣の色との関係で初めて正しい色が見つかります。
- 使用ブラシ:六鉛筆・不透明度60〜80%
【STEP 4】顔を仕上げながら着物へ

顔の完成度を上げながら、着物の藍色を広げていきます。
この作品で一番時間をかけたのが赤い花柄の半衿です。全体が落ち着いた色調の中で、半衿の赤だけが鮮やかに浮き上がる。描き込みすぎると野暮になりがち。その手前で止める判断が難しかったです。
【STEP 5】背景で時代が決まる

③背景・仕上げレイヤーの出番です。
白だった背景に黄土色・和紙風のテクスチャを乗せていきます。均一に塗るのではなく、古い写真のように色むらを作りながら。緑・茶・金を混ぜ、叩くように置いていくと、昔の古写真のような味わいや深みが生まれます。
背景を入れた瞬間、女性が「今の人」から「100年前の人」に変わる感覚がありました。この一手が作品の時代を決めます。
【実は4枚?】レイヤーの実態を公開

「3レイヤーで描いた」と言いましたが、正確には実質2枚がメインです。
- レイヤー2 ── ほぼハイライト専用(目の光・肌のつや・着物の光沢)
- レイヤー3 ── 人物・色塗りのメイン
- レイヤー4 ── 背景テクスチャ
- 背景色 ── 黄土色のベース(Procreateの背景色機能)
一番上のレイヤー2は最後の仕上げで白を乗せるためだけのレイヤーです。ほとんどの描き込みはレイヤー3の1枚に集約されています。
【仕上げの秘密】ノイズで100年前の質感を作る

完成直前に使う機能があります。それがProcreateの「調整」→「ノイズ」です。
全体にわずかにノイズをかけることで、デジタル特有のつるっとした質感が消え、古い写真や版画のような粒状感が生まれます。大正時代の肖像写真を見ると、必ずこの粒子感がある。それをデジタルで再現するための最後の一手です。
かけすぎると汚くなるので、5〜10%程度が目安。画面で見るより印刷したときに効果が出ます。
完成・そしてINPRNTへ
タイトルは「慕情 / Bojo – Longing」。
完成後はProcreateからJPEG・sRGBで書き出し、INPRNTにアップロードしました。書き出し時のカラープロファイル設定は→こちらの記事で詳しく解説しています。
まとめ:3レイヤー制作で大切にしていること
- レイヤーを増やさず、迷わず描くことに集中する
- 最初から表情・ポーズのイメージを持って始める
- 色は孤立させず、隣との関係で決める
- 描き込む前に「ここで止める」判断をする
- 背景は最後に入れて作品の時代・空気感を決める
道具はシンプルでいい。大切なのは、描く前に「何を伝えたいか」を決めておくことだと思っています。
この記事で使ったもの
- iPad・Apple Pencil / アフィリエイトリンクをここに
- Procreate / アフィリエイトリンクをここに
- INPRNT 出品ページ「慕情」/ https://www.inprnt.com/gallery/morirancru/

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