櫛(くし)|大正浪漫イラスト制作過程[Kushi]

櫛
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櫛。たったそれだけの、朝の儀式。
鏡の前に立つ女性は、何を見ているのだろう。
自分の姿か、それとも映らない何かか。

今回は大正浪漫シリーズの新作「櫛(Kushi)」の制作過程を振り返ります。


目次

「櫛(くし)が生まれるまで

今回の作品には、インスピレーションの源となった題材があります。大正から昭和にかけて活躍した版画家・橋口五葉の「髪梳ける女(1920年作)」です。非常にダイナミックかつ繊細な構図ゆえに、「果たして自分の中でまとめ上げることができるだろうか」と試行錯誤しながらApple Pencilを走らせました。

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しかし、描き始める前からひとつだけ明確に決めていたことがあります。
それは「髪を整える女性」ではなく、「鏡と向き合う女性」を描くこと。
そして、その繊細な「手」を表現することでした。
手元に女性の内面や美しさ、そして色気をどれだけ宿らせることができるか——それが今回の最大の挑戦でした。


大正浪漫イラスト「櫛」ラフスケッチ①
①ラフ画

赤という選択 ── 櫛・着物・口紅

この絵には、3つの「赤」が存在します。
赤い櫛、赤い着物、そして赤い口紅。すべて同じ赤を用いています。

透き通るような白い肌、艶やかな黒髪、そして金茶色の背景。その中に、点を打つように赤を散りばめました。
色のコントラストは、数が少ないほど視覚に強く訴えかける。そう信じて描いています。


手が語るもの

この作品を見たとき、最初にどこに目がいくでしょうか。

顔ではなく、「」だという方が多いのではないかと思います。

骨ばった指の関節、すっと伸びた爪、そして髪にスッと入り込む力の加減。ここは特に魂を込めた部分です。

「顔」はその瞬間の表情を語るもの。でも「手」は、その人の歩んできた人生そのものを語る力を持っている。そう私は思っています。


大正浪漫イラスト「櫛」着彩初期
②下地着色

鏡は何を映しているのか

本作に描かれた鏡は、背面のみを見せています。

鏡は人の姿を映すものではなく、心を映すもの。
そんな意図を込めて、あえて鏡面を描きませんでした。

大正浪漫イラスト「櫛」人物完成・白背景
③人物完成。背景テクスチャを乗せる前の状態。

背景の金茶色とテクスチャ

制作はすべてデジタルで行っており、レイヤーは「ラフ・線画・着彩・背景テクスチャ」の4枚のみで構成されています。

背景の金茶色、あの古い和紙のような質感は、独立した1枚のレイヤーで作り込んでいます。霞んだような、にじんだような独特のムラが鍵なのですが……その手法は、まだ企業秘密です。(笑)

新しいデジタルの道具を使いながら、あえてアナログな「時間の経過」や「古い空気感」を表現すること。それこそが、私の作品に通底するテーマでもあります。


大正浪漫イラスト「櫛」背景テクスチャレイヤー
④背景テクスチャのみ。この金茶色のムラが全体の空気を作っている。

タイトル「櫛」に決めるまで

タイトルの決定には、実は少し悩みました。
「ととのう」「髪を梳く」「鏡の前で」など、いくつかの候補がありましたが、AIに聞いてもピンとこず。最終的には漢字一文字の「」に辿り着きました。

たった一文字で、この絵のすべてを物語ってくれる気がしたのです。

海外向けには「Kushi」としています。
言葉の意味は分からなくとも、その響きだけで何か伝わるものがあると信じています。


完成作品と販売情報

新作「櫛(Kushi)」は、海外のアートプリントサービス「INPRNT」にて販売中です。
A4から大判サイズのファインアートプリントとしてオーダーいただけます。
もしこの世界観を気に入っていただけましたら、ぜひギャラリーを覗いてみてください。

→ INPRNT ギャラリー「morirancru」を見る

大正浪漫イラスト「櫛」完成作品 by Ran Mori
⑤「櫛(Kushi)」完成。大正浪漫シリーズ / Ran Mori

次の作品も、またこうして制作過程を残していきたいと思います。
最後まで読んでくださってありがとうございました。

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この記事を書いた人

コロナ禍をきっかけに絵を約40年ぶり?に描き始める。「心に残る1枚を」をテーマに色々なジャンルで絵を描いてます。

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