預言者ヨカナーン(洗礼者ヨハネ)に片思いし、「その首が欲しい」と父ヘロデ王に処刑を命じた——元祖サイコパス王女とも呼ばれる、あの人物です。オスカー・ワイルドはその物語を戯曲『サロメ』として書き上げました。日本では大正時代に初めて上演され、当時の人々を震撼させたといいます。退廃と狂気が渦巻くあの世界観を、私なりに描いてみました。
今回は制作過程とあわせて、この絵を描きながら気づいたことを書き残しておきます。


この作品について
タイトルは「サロメ」。
1900年代初頭、日本でオスカー・ワイルドの『サロメ』が上演されたとしたら——そんな空想から生まれた作品です。深紅のドレス、金の冠、素足。西洋の悲劇的ヒロインを、大正時代の舞台女優として描きました。
制作環境
- 使用ツール:Procreate(iPad)
- キャンバス:A4サイズ・300dpi・sRGB
- ブラシ:六鉛筆(1本のみ)
- レイヤー構成:2枚+背景色(後述)
制作過程
STEP 1|顔のない「サロメ」からはじめる
最初に描いたのは、顔のないシルエットでした。
深紅のドレスの形、両腕を開いたポーズ、床まで流れるトレーン。「このドレスをどう描くか」を先に決めたかったので、顔は後回しにしました。真っ黒な背景に浮かぶ赤いドレス——この時点でもう、なんとなく「サロメ」の雰囲気が出ていて、少し興奮しました。

STEP 2|顔と髪を入れる
シルエットが決まってから、顔・髪・金の冠を描き加えました。
参考にしたのは、明治〜大正期に活躍した日本人ソプラノ歌手の古い写真です。パブリックドメインの資料を使いながら、顔は完全にオリジナルで描いています。

STEP 3・4|ドレスに「息」を吹き込む
ここからが、この作品でいちばん時間をかけた部分です。
六鉛筆1本で、ドレスの布の質感を描き続けました。光が当たる部分、影になる部分、布がよじれる部分。単純な赤ではなく、何十回も筆を重ねて、深みのある深紅にしていきます。「塗る」というより「削る」に近い感覚でした。


STEP 5|素足と手の描き込み
細部に入ります。素足、指先、手の甲の骨感。
サロメという人物の「生々しさ」を出したくて、ここは丁寧に描きました。豪華なドレスとのコントラストとして、肌の部分はあえてリアルに仕上げています。

STEP 6|金の装飾と、アンティークの「枠」
ドレスに金のメダリオン(円形の装飾)を散らしました。西洋的な装飾モチーフですが、どこか家紋にも見えるデザインを選んでいます。
そしてこの作品最大の特徴が、アンティーク写真風のボーダーです。画面の端が焼けたような、古い写真のような枠。これを入れた瞬間、「現代のデジタル絵」ではなく「百年前の記録」のような雰囲気になりました。

今回の制作で試したこと:2枚レイヤー
私はいつも、できるだけシンプルなレイヤー構成で描いています。今回の構成はこうです。
- レイヤー1:本体(人物・ドレス・すべての描き込み)
- レイヤー2:紙テクスチャ
- 背景色:黒

この「紙テクスチャ」レイヤーが、今回の作品の鍵です。デジタルで描いているのに、完成した絵を見ると「紙に描いた」ような質感があります。テクスチャを重ねるだけで、こんなに変わるのかと自分でも驚きました。
Procreateを使いはじめた頃、「デジタルは綺麗すぎて冷たい感じがする」と思っていました。でも、テクスチャを1枚重ねるだけで、その問題がほぼ解決しました。
完成
「百年前の舞台写真」のように仕上がりました。深紅と黒のコントラスト、金の装飾、素足——すべてが「サロメ」という人物の持つ美しさと危うさを表していると思っています。
この作品は現在、以下のショップで販売中です。
まとめ
| 作品名 | サロメ |
|---|---|
| 制作期間 | 2日/4時間 |
| レイヤー数 | 2枚+背景色 |
| 使用ブラシ | 六鉛筆のみ |
| こだわり | アンティークボーダー、紙テクスチャ |
デジタルなのに「紙」の感覚で描けるのが、Procreateのいいところだと改めて思いました。

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